本プロジェクトについて

本研究は、1860年代から21世紀まで来日した外国人宣教師が日本語で刊行した作品群が近代日本に与えた影響を検討するものである。

1549年のザビエルの来日に始まるキリスト教伝道は、とりわけ安土桃山・徳川時代初期の日本に広汎な影響を及ぼし、人口2千万のうち70万人を改宗させることに成功した、日本史上「最大の社会運動・文化運動」と考えられている(海老沢有道『キリシタン南蛮文学入門』1991年)。キリシタン時代の伝道、教育、殉教などを記録したキリシタン文学は、室町末期から徳川初期にかけて著された書物群として残されただけでなく、1860年代以降に来日した宣教師たちが日本語で著述した書籍においても、その精神は継承されている。それらの作品は、基督教の宣教、西洋思想と科学の紹介、日本語の創造的運用、そして異文化的視点からの日本文学・文化の理解という点で特徴的なキリシタン文学の精神を大きく発展させ、多言語性と多文化性に富んだものであり、近代日本文化の一部となっている。

今日の日本では、言語、思想、文学、政治、外交、教育、医療、社会、美術、音楽、建築に亘り、キリスト教の影響が見当たらないところはない。これは宣教師の活動と日本語著書に負うところが大きい。だが、近現代宣教師の日本語著書のもつ文学的、思想的、社会的影響に関する研究はまだ非常に限られている。

本研究は、宣教師(カトリック、プロテスタント)の日本語文学を、そうした書物が成立するまでの各段階(著述、印刷、出版、流布、受容)において考察し、近代日本の宗教、政治、思想、社会、教育、文化などへの波及効果を解明する。また、その独自性と普遍性の双方を理解するために、宣教師の中国語文学・韓国語文学との比較をも行う。

ステンドグラス/©島原教会

写真:島原教会のステンドグラス(一部)

メンバー

郭 南燕Nanyan GUO

研究主宰者 日本語文学者

郭 南燕/研究主宰者  日本語文学者

研究テーマ
宣教師の日本語文学と中国語文学

石上 阿希ISHIGAMI Aki

国際日本文化研究センター 特任助教

石上 阿希/国際日本文化研究センター 特任助教

研究テーマ
近世出版文化

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