外国人宣教師日本語著作目録
1873年にキリスト教禁教が撤廃されてから、欧米宣教師が相次いで日本に入国し、宣教、教育、福祉、医療に従事しながら、短期間に習得した日本語による著述活動をも盛んに行った。21世紀の今日まで、数万人の来日宣教師のうち、約300人が非母語である日本語を用いて、およそ3000点の著書を執筆し、刊行してきた。
日本語で著述をする外国人はほかにもいるが、宣教師のように使命感に駆り立てられて、矢継ぎ早に日本語著作を執筆した「職業」はほかにない。これは、キリスト教に対する近代日本社会の大方の寛容と好奇心とも関係する。書けば読んでくれる人が日本にたくさんいる、という確信があったから、宣教師たちはせっせと日本語で書いたのである。漢字とハングルよりはるかに複雑な書記法(ひらがな・カタカナ・漢字)をもつ日本語と格闘しながら、繁忙極まりない活動の合間に生み出されたこれらの大量な著作は、近代の宣教師が東アジアでやり遂げた「文化的偉業」ともいえよう。
これらの著作は、宣教師たちが日本語・日本文化に最大限の理解を示し、日本社会に適応した形で、キリスト教の精神とともに、西洋の宇宙観、倫理観、文学、言語、歴史、思想を伝えたものであり、東西の言語文化の交流だけではなく、外国人たちが近現代日本の文化建設への寄与をも示している。近年、注目を浴びてきた分野である「日本語文学」の宝庫でもある。
本目録は、宣教師たちの19世紀後半から現在まで刊行してきた著作を網羅的に調査したものを目指したものであり、本サイトにおいて公開することによって、本ユニット「キリシタン文学の継承:宣教師の日本語文学」の研究成果を広く国内外で共有し、書物学としての「宣教師の日本語文学」という新しい研究領域の確立を願っている。
画像/A. ヴィリオン神父が信者 守山甚三郎に宛てた直筆書簡(1922年3月13日付)部分、津和野教会所蔵
参考文献/
郭南燕編著『キリシタンが拓いた日本語文学:多言語多文化交流の淵源』(明石書店、2017年9月)
郭南燕著『ザビエルの夢を紡ぐ:近代宣教師たちの日本語文学』(平凡社、2018年3月)